水口施設長コラム No.30 アルツハイマー型認知症の病態と新規治療法の開発に向けて:

 アルツハイマー型認知症(認知症)は高齢化と共に増加し大きな社会問題となっている。2012年における認知症患者数は大凡450万人であり、2025年には700万人(5人に1人)になると推測されており、新規治療法や予防法の開発が喫緊の課題となっている。
 認知症では海馬や大脳皮質に多数の老人班(プラック)が認められる。プラックは38-42個のアミノ酸から出来ており、脳では神経細胞、末梢では皮膚や筋肉でも産生されている。正常では可溶性プラックが産生され、脳脊髄液や血管系によって排除されているが、不溶性プラックは神経細胞に対して毒性を示す。
プラックを除去することによって認知症の改善が見られるとの仮説の元に、プラックを標的とした試みがなされているが、未だ有効であるという決定的な証拠は得られていない。また、動物実験でもプラックを除去すると学習効果の低下が認められており、記憶の増強や定着にプラックが関わっているという可能性もある。
 プラックはウィルス・細菌などの微生物を凝集する。これらの凝集体は食細胞によって除去されることから、プラックは防御作用をもっている。すなわち、プラックは様々な感染症に反応し感染防御的に働いていると考えられる。また、ガンと認知症の患者数には逆相関があり、認知症患者ではガンに罹りにくいという報告もある。
 以上より、プラックを除去するだけでは認知症の治療・予防法として機能するとは考えにくい。もちろん、プラックが認知症の発症過程に関わっていることは否定できず、プラックを含む複数の過程が関わっているという可能性もある。フランス政府を始めとして認知症治療は困難であるという報告もあるが、今後認知症の病態を解明することによる新規治療法の開発が待たれている。

  • アクセス アクセス


    〒244-0003
    神奈川県横浜市戸塚区戸塚町
    1800-3

    お問い合わせ アクセス情報はこちら