水口施設長コラム No.27 変異新型コロナウィルス

 中国武漢で発生した新型コロナウィルス感染症(Covid-19)はあっという間に全世界に広まり、感染者は1億2千万人に達し、1日当たり40万人のペースで拡大している(ジョンスホプキンス大学の集計)。現在、ヨーロッパでは新型コロナウィルス(SARS-COV-2)の変異型が猛威を振るっており、再びロックダウン状態となった。我が国の感染者は40数万人であり世界的に見ると少ないが、変異型が出現している。新型コロナウィルスは呼吸器のみならず、肝臓、腸管、そして神経系にも影響を及ぼす。
 これまで6種類のコロナウィルスが知られている。SARS-COV-2は7番目のウィルスであり、SARS-CovとMERS-Covに80%程度の相同性がみられる。SARS-COV-2は1本鎖+RNAウィルスであり、RNAウィルスとしては大きい部類に属する(30Kb程度)。Sタンパク質(Spike protein)がACE2(angiotensin converting enzyme)受容体に結合する領域であり、プロテアーゼと協同的に作用し、肺などの標的細胞に侵入する。他のRNAウィルスと同様に変異しやすく、種々の変異株が報告されている。S領域に対する抗体がウィルスを中和する作用をもっている。
 英国では変異株が増加している(7割程度が変異株、2021年1月の時点)。変異株は従来型よりも感染力が強く拡散しやすいと推定されているが、変異株は南アフリカ、米国、日本にも拡散している。変異型SARS-Cov-2も飛沫(respiratory droplets)を介してヒトからヒトへと拡散する。
 一般的に感染者の約8割は軽症あるいは無症状であり、残りの2割が重症化すると言われている。感染により呼吸器症状(咳、発熱、息切れなど)が出現するが、重症化するとARDS(acute respiratory distress syndrome)に陥り、腎障害や心臓障害がもたらされる。頭痛・めまい・てんかんなどの神経症状を呈する場合もある。高齢の男性および高血圧、冠動脈疾患、糖尿病などの持病のある方が重症化しやすく、死亡者数は200万人以上である。
 ウィルスは感染後、5日〜28日目に検出される。回復しても14〜24日間に渡ってウィルスが検出され、ウィルスの排出量と死亡との関連性が指摘されている。適切な治療の遅れが大きなリスク要因である。
 これまで色々な治療法が用いられているが、効果的な抗ウィルス薬はまだなく、多くの抗ウィルス薬や抗炎症剤は補助的なものである。例えば、RNA ポリメラーゼ活性を抑制するレムデシビルが使用されたことがあるが、イタリアでは効果が確認されていない。現在、新規薬剤候補が報告されており、今後に期待したい。
 点突然変異や遺伝子組み換えによって変異ウィルスが出現するが、全ての変異ウィルスの感染力が強くなるわけではなく、変わらない者や弱くなったもの等があるだろう。その中で強くなったものが拡大するチャンスが大きいのである。インフルエンザやコロナウィルスのようなRNAタイプのウィルスが変異しやすく、ヒト免疫不全ウィルス(Human immunodeficiency virus, HIV)がもっとも変異しやすく、ワクチンの開発が困難である。
 インフルエンザウィルスに対してワクチン接種が毎年実施され、一定度の効果が認められている。しかしながら、発症を完全に予防できる効果は期待できず、重症化を防ぐことができる程度である。新型コロナに対するワクチンが欧米で既に実施されており、90数%の効果があったという報告もある。しかしながら、インフルエンザウィルスのように、毎年ワクチン接種が必要である可能も有り、今後の推移を見守りたい。
 ワクチン接種が開始されても、これまでと同様にマスクの着用、三密の回避、手洗いなどの基本的な感染対策を守っていくことが必要だ。新型コロナウィルス感染症の拡大によって働き方や生活様式の変容を迫られている。これらのハイリスクの中での活動を通して今後の風水害、地震などのハイリスクに備える準備としたい。
 最近数十年の間に、SARS, MERS, そして新型コロナウィルスといった新興ウィルス感染症が猛威を振るっている。これらの感染症は野生動物とヒトとの間で共通にみられる感染症(人畜共通感染症)であり、世界的な取り組みが必要であろう。感染症は地球温暖化、核兵器問題、貧困格差などの問題と並んで、グローバルな視点での対策が必要なステージに入っている。

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