水口施設長コラム No.23 介護分野におけるICT

No.23 介護分野におけるICT
 急速な勢いでスマートフォンが普及し、電子決済、オンラインによる雑誌・新聞、オンライン授業、在宅勤務など日常生活の中にIT(Information Technology,通信技術)が入り込んでいる。新型コロナによる外出の自粛や三密の回避がこの傾向を加速させているようだ。しかしながら、介護分野では、ICT(Information and Communication Technology, 情報通信技術)の導入が立ち遅れている。 少子高齢化によりますます人材確保が困難になると予想され、記録のデジタル化や画像・動画によるアセスメント、人のサービスの一部を担う介護ロボットの活用などにより、業務の効率化を図ることが必要不可欠であると言われている。今回はこの問題について触れてみたい。 (1)介護ロボット ロボットというと、「ASIMO」「Pepper」が有名であるが、経済産業省によると「センサー系」、「知能・制御系」、および「駆動系」の3要素を備えたもので定義されている。現時点では、1台のセンサーにより1名の利用者さんを見守るタイプのものが一般的であり、アラートが出た場合に駆けつけると,転倒防止につながる場合もある。将来的には、センサーが個々の利用者の動きを熟知し、動作を解析、転倒のリスク評価、そして防止に繋げるロボットの開発が期待されている。さらに、移乗・移動支援ロボット、トイレ誘導やトイレ内での動作を支援する排泄支援ロボット、そして入浴支援ロボット等の開発が進行中である。 (2)介護・看護記録の電子化:ペーパーレス化 ケアプラン、ケアサービス提供の記録、アセスメント結果の記録、報酬請求に繋がる記録、診療情報提供書等、日々の業務の中で手書きの文書は非常に多く、保管は膨大なものとなっている。さらに、行政に申請する文書、報酬請求に関する文書、監査指導に関わるものがあり、電子化に向けた行政・施設事業所の連携が望まれる。 電子化に当たっては、まず作成文書の統一化が必要であり、老健が推奨している福祉の森(R4)の活用などが望まれる。とりわけ重要なことは、個人情報の保護であり、個人情報を保護するシステム開発が必須の課題である。(3)ICTネットワークによる医療・介護連携 地域で安心して暮らせる社会の実現には、医療、介護、福祉情報の共有化が必要であるが、現時点では医療、介護施設では別々に情報が処理されているため3M(ムリ、ムラ、ムダ)が多い。先進的な取り組みとして、病院、老健施設、そのたのサービス事業所をネットワークで結ぶクラウドサービス(ID-Link:株式、エスイーシー)など民間ではICT化へ動きが進行している。 介護業界のITが遅れている理由として、導入にまとまった資金が必要であること、介護というICTになじまない職業的な性格、そして導入に必要な人材の不足などが上げられており、解決に向けた取り組みが必要であろう。 人とAIの協同によって安全で安心な介護が可能となることから、政府もSociety5.0社会における介護の世界を提案している。 (4)Society5.0社会における介護(内閣府による) 内閣府によると、Society1(狩猟社会), Society2(農耕社会), Society3(工業社会), Society4(情報社会)に続く Society5(新たな社会)とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に統合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会を指している。 利用者のリアルタイムの情報を入手(Internet of Things, IoT:身の周りのものがインターネットにつながる仕組み)、医療情報、感染症情報を含む環境情報のようなビッグデータをAIが解析することによって、1)ロボットによる生活支援・話し相手などにより一人でも快適な生活を送ること、2)医療データの共有によりどこでも最適な医療を受けること、3)介護現場におけるロボットの支援によってスタッフの負担の軽減が期待されている。また、これらの施策は国レベルでの介護コストの削減や人手不足の解消につながるだろう。(5)現状からSociety5.0社会における介護への橋渡し トヨタ、新幹線など世界に誇る業界でも、より安全で快適な製品を作るために日々改善が積み重ねられてきた。介護分野でも、直ぐに取りかかるべき業務改善として次のようなものが上げられている。1)職場の環境を整備し、業務の明確化と役割分担をすること、2)記録・報告書の工夫と電子化、3)電子化による情報共有を図ること、4)手順書の作成、5)新人、中堅職員など経歴に応じた指導体制の確立、6)施設理念・指針に基づいて、自律的に行動できるスタッフの養成等が重要であろう。 上記の改善・改革の施設風土を醸成することによってSociety5.0の理想の介護に近づくことが可能となる。