水口施設長コラム No.22 新型コロナとインフルの同時感染はおこるだろうか:ウィルス干渉

No.22  新型コロナとインフルの同時感染はおこるだろうか:ウィルス干渉

中国武漢で発生した新型コロナウィルス感染症(新型コロナ)は依然として衰えをみせていない。例年、朝晩の冷え込みが厳しくなる頃、季節性インフルエンザ感染症(インフル)が出始め、インフルと新型コロナウィルス感染症(新型コロナ)の同時感染が危惧されている。しかしながら、8月末から9月初旬以降のインフル患者数は昨年度に比べて激減しており(東京都健康安全研究センターの報告)、手足口病や水泡患者でも同様の傾向が見られている。南半球のオーストラリアでも、インフル患者が激減していた。
 インフルは冬季に流行し、春の訪れと共に終息する。インフルエンザウィルスは上気道症状を起こすが、下気道には到達せず、それ自体では肺炎症状は併発しない。しかしながら、インフルエンザウィルスは肺炎球菌感染症を併発しやすく、特に高齢者ではインフル感染後の肺炎に注意が必要だ。新型コロナウィルスに対する受容体(Ace-2)は下気道に存在するため、息切れ・呼吸困難など肺炎症状を呈する。高齢者は、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)の装着が必要となる重症の割合が高く、注意が必要だ。
 同時感染を防止出来た理由として、マスク、手洗い、三密の回避、ソーシャルディスタンスの確保等、基本的なウィルス対策を上げることが出来る。もう一つの可能性として、「ウィルス干渉(Virus interference)」がある。ヨーロッパにおける2009年のインフルエンザパンデミックでは、風邪の原因であるライノウィルス感染が減少し、風邪が流行するとインフルは減少していた(ウィルス干渉)。 
 あるウィルスに感染すると、インターフェロン産生など自然免疫系が作動し、ウィルス感染に抵抗性となる。インターフェロンはウィルス感染細胞を破壊すると共に、周囲の細胞をウィルスに罹りにくくする作用をもっている。
 実験的に細胞を取り出し、ライノウィルスを感染させると、インターフェロンが産生され、次にインフルエンザウィルスを感染させても罹りにくくなった。インターフェロン産生を抑制させる処置を施しておくと、インフルエンザウィルスに感染することから、インターフェロンが重要な役割を果たしていると推測できる。その他、両者のウィルスの細胞内の資源をめぐって競合する可能性等が上げられている。
 北風が厳しくなると共に、新型コロナとインフルの同時発生が恐れられている。施設では、感染症の動向を注視しながら、これまで通り基本的な感染対策を徹底させていきたい。