水口施設長コラム No.18新型コロナウィルス感染症(5) ー重症化に関わる遺伝子要因ー

新型コロナウィルス感染症(5) ー重症化に関わる遺伝子要因ー

 新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)に感染しても80%の人は治療の必要がない程度の軽症であるが、残りの15%が重症化し、5%程度が死亡すると報告されている。重症化に至る遺伝子要因を明らかにするために、ヨーロッパのグループがスペインとイタリアの重症患者の一塩基多型(single nucleotide polymorphism, SNP)を対象群と比較検討し、重症化に関わっている遺伝子領域をサーチしたところ、第3番と第9番染色体にSNPを見出した1)。ヒトの遺伝子の塩基配列は全く同じではなく、SNPと呼ばれる塩基が異なる箇所がある。彼らは呼吸不全が認められる症例を重症化と定義した。


(1)第3染色体のSNP
 第3染色体における6個の遺伝子座(SLC6A20, LZTFL1, CCR9, CXCR6, FYCO1, XCR1)が呼吸不全と相関を示した。リスク因子であるGA変異と肺細胞のCXCR6遺伝子の発現の低下およびSLC6A20, LZTFL1の発現上昇との間に関連性が認められた。
 興味深いことに、CXCR6(そのリガンドであるCXCL16)はインフルエンザ感染症などの記憶CD8 細胞傷害性T細胞の肺へのホーミングに関わっていることが報告されている。SLC6A20遺伝子はSARS-2の受容体であるangiotensin-converting enzyme 2 (Ace2)と相互作用をしているsodium-imino acid (proline) transporter 1(SIT1)をコードしている。これらの遺伝子変異がどのように重症化に繋がっているかを解明することが今後の課題である。 
  
(2)第9染色体のSNP
 呼吸不全と相関を示したもう一つのSNPは第9染色体のABO遺伝子座であった。A型の人は他の血液型の人よりもハイリスクであったが、O型の人は他の血液型よりも抵抗性を示した。しかしながら、この違いは僅かなものであり、決定的な要因ではないだろう。0型の人でも重症化することもあり、A型の人が軽症である場合もある。興味深いことに、ゲノムワイドな解析で得られた結果と同様な結果が非遺伝学的な解析から得られている2)。新型コロナ感染症の重症化におけるABO血液型の役割については、今後の解析が待たれる注)。また、今回のデータは呼吸不全を重症化の定義としており、血管病変、ショックなどとの関連性については今後の課題である。

(3)HLA
 HLAタイプが免疫反応をコントロールしていることが知られている。ABO血液型に比べてHLAは多様性に富んでおり、また感染症や免疫関連疾患はHLAとの関連性を示す場合があることから、HLAがCovid-19の重症化に関わっていると考える研究者が多い。しかしながら、今回の調査では、明らかな相関は認められなかった。今後、アジアなど他の地域に関するデータを注意深く見守りたい。

参考論文
1. The Severe Covid-19 GWAS Group. Genomewide Association Study of Severe Covid-19 with Respiratory Failure. DOI:10.1056/NEJMoa2020283
2. Cheng Y, Cheng G, Chui CH, et al. ABO blood group and susceptibility to severe acute respiratory syndrome. JAMA 2005;293:1450-1.

注:
血液型と性格に関連があるという認識はなかなか無くならないが、血液型で性格を予想することは不可能であるとされている。
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