水口施設長コラム No.15骨粗鬆症


骨粗鬆症

 背中が丸くなった高齢者(老人性円背)が杖をついて歩いていらっしゃる姿を見かけることがある。背中や腰が丸くなり、猫背となるのは主に骨粗鬆症による圧迫骨折が原因である。円背になると、膝に負担がかかり、つま先が上がらなくなり、転倒しやすくなる。
 骨粗鬆症とは「骨密度の低下」と「骨質の劣化」により骨強度が低下する疾患である。骨密度は思春期に最大値を示すが、加齢や閉経に伴い低下する。古い骨は破骨細胞によって吸収され、骨芽細胞がつくる骨によって補充される。つまり、骨芽細胞による骨形成を破骨細胞による骨吸収が上回ると骨密度は低下する。この骨のダイナミックスは「骨リモデリング」と呼ばれている。このプロセスは生涯に渡って繰り返され、全骨格の3〜6%がリモデリングされる。
骨密度が若年成人(20-44歳)の骨量の平均値(Young adult mean, YAM)と比べて80%未満の場合、あるいは低下がなくても椎体骨折または大腿骨近位部骨折ある場合は骨粗鬆症と診断される。軽度の転倒などによって誘発された骨折は脆弱性骨折と呼ばれる。脆弱性骨折がある場合は、骨密度が70%以上80%未満 、あるいは脆弱性骨折がない場合でも70%未満は骨粗鬆症と診断される。
 加齢、閉経、および生活習慣病に伴って増大する酸化ストレスによって骨吸収優位の骨リモデリングが促進され、骨密度の低下が誘発される。喫煙はエストロゲン(女性ホルモン)の分泌を低下させる。エストロゲンは破骨細胞の分化を抑制すると共に骨芽細胞由来のRANKL(NF-kappaB活性化受容体リガンド)の発現を抑制することによっても間接的に破骨細胞活性化を抑制することが知られている。運動不足や過剰な飲酒では骨芽細胞の活性化が阻害され、丈夫な骨が作られなくなる。
 骨は支持組織として機能するばかりでなく、ホルモンやサイトカインを産生すると共にこれらのメッセージ物質に対する受容体を有しており、組織間相互作用によって生体の恒常性に関わっていることが明らかとなってきた。骨芽細胞によって分泌されるオステオポンチンやオステオカルシンはそれぞれ免疫機能の活性化やインスリン分泌を促進する。また、骨細胞はFGF23を分泌し腎臓におけるリン排泄を増強するばかりでなく、スクレロスチンを分泌し骨芽細胞による骨形成を抑制することが報告されている。
 交感神経系は骨芽細胞に存在しているβ2受容体を介して骨形成を抑制し、骨吸収を促進する。一方、副交感神経系は交感神経による骨形成抑制作用に対して拮抗的に働く。脂肪細胞から分泌されるレプチンは食欲を抑制すると共に交感神経系を活性化する。このような神経系による骨代謝の制御システムが明らかにされつつある。
 骨粗鬆症を来す疾患として、副甲状腺機能亢進症、糖尿病、慢性腎不全、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease, COPD)、生活習慣病、およびステロイドホルモンの副作用などが知られている。このような疾患の基盤として酸化ストレスの増大が示唆されている。
 骨粗鬆症の治療目標は骨吸収と骨形成のバランスを改善し骨折を予防することにある。現在、認可されているものには、Ca薬、女性ホルモン薬、選択的なエストロゲン受容体モジュレーター(selective estrogen receptor modulator; SERM)、ビタミンK2薬、副甲状腺ホルモン薬、ビスホスホネート薬、デノスマブなどがある。
 Ca薬はわずかではあるが、骨密度上昇および骨折予防効果がある。エストロゲンは閉経後の女性の骨密度上昇・骨折予防効果を有している。活性型ビタミンD製剤は長期間投与の安全性が示されており、小腸からのCa吸収促進、副甲状腺ホルモンの生成・分泌抑制を介して骨密度の上昇・骨折を抑制するとの報告がある。 ビタミンK2は骨密度上昇をもたらす。ビスホスホネート薬は骨吸収阻害、骨形成促進、および骨吸収阻害作用を有しており、エチドロネート(第1世代)、アンドロネート(第2世代)、リセドロネート、ミノドロン酸(第3世代)に分類されている。副甲状腺ホルモンのフラグメントであるテリパラチドは骨形成を促進し、骨吸収を抑制することによって骨密度の上昇をもたらす。デノスマブ(RANCLに対するモノクローナル抗体)も骨吸収を抑制し,骨密度上昇をもたらし、椎体骨折抑制効果があることが報告されている。ラロキシフェン(骨吸収抑制剤、SERM)は乳房では抗エストロゲン作用、骨ではエストロゲン作用を発揮し、骨密度の上昇を誘導する。
 骨粗鬆症の予防には危険因子を取り去ることが必要である。成長期は骨量が増加する時期であり、必要な栄養を摂取し、適度な運動をすることが重要である。閉経後の女性や高齢の男性が骨粗鬆症と診断された場合は、転倒予防に努めると共に整形外科医との連携により薬物治療を実施している。最近の医学・生物学の進歩により、運動によって骨芽細胞から若さを保つホルモンが産生されることが明らかとなってきた。施設では、管理栄養士、リハビリスタッフが連携し、患者さんに相応しい運動や食事の提供に努めている。

 

アクセス


〒244-0003
神奈川県横浜市戸塚区戸塚町
1800-3

お問い合わせ 詳しくはこちら