水口施設長コラム No.11 転倒・骨折


骨折・転倒

 チンパンジーやゴリラと大差ない祖先から、現人類が直立し、二足歩行者になった。手を自由に使うことが可能となり、獲物を獲得したり、食べ物を調理したりすることができるようになった。そのことが脳の発達や言語の獲得に繋がった(ダーウィン進化論)。しかしながら、その代償として腰痛、転倒などというものを背負い込んだ。

 高齢になると、筋力やバランス力が低下し、転倒による骨折が多くなる。現在、日本には1000万の骨粗鬆症患者がいると言われている。骨折により活動性が低下すると、認知レベルの低下や感染症に罹りやすくなり、生命予後が悪化する。骨折は、脳血管障害、認知症、老衰などと並んで介護老人保健施設(老健)への入所の主要な要因となっている。
 骨折の原因として、転倒と共に骨粗鬆症が上げられている。高齢者になると、運動や反射能力が低下し、骨折を起こしやすくなる。脳血管障害やパーキンソン病になると、運動をコントロールする機能が低下し、転倒しやすくなる。筋力の低下(ザルコペニア)、ベンゾジアゼピン系薬剤、および降圧剤なども転倒の原因となっている。
 過去一年間の転倒の既往は転倒のハイリスク要因である。その他、歩く速度が遅くなった、杖を使って歩行。つまずくことがある。背中が丸くなった。6種類以上の服薬(ポリファーマシー)なども転倒のリスク要因となっている。
 高齢者では骨粗鬆症患者が多く、特に女性では閉経後、急速に進行する(65歳以上の女性の1/3が骨粗鬆症患者であると言われている)。骨粗鬆症は海面骨で早く進行するため、脊椎圧迫骨折が最も多く、次いで長管骨端部(上腕骨近位部、橈骨遠位部、大腿骨近位部、大腿骨遠位部)に骨折が発生しやすい。自宅での転倒などの軽微な外傷が骨折に繋がるので注意が必要である。特に、下肢の骨折、特に大腿骨近位部骨折では臥床期間が長いことから寝たきりになることが多く、問題となっている。 
 骨折の診断は臨床症状とX線写真による。臨床症状として、疼痛、特に運動痛、腫脹、熱感、および機能障害(上肢挙上不能、立位・歩行不能など)が認められる。胸椎、腰椎と呼ばれる骨が気づかない間に折れてしますことがあります(いつの間にか骨折)。腰痛持ちの方がいつもより強い腰痛を自覚した場合、ぎっくり腰だと思っていたら何となく治りが悪い場合、痛みすら感じない場合など様々です。
 治療の目標は、良好な整復位を得て、強固に固定し、早期からリハビリテーションを開始することによって機能を回復することにある。上肢は保存的にギブス固定を実施することが可能であるが、下肢、特に大腿骨近位部骨折では保存的な治療を用いると3ヶ月以上を要することから、観血的な骨接合術や人工骨頭置換術が用いられる。高齢者では免疫機能が低下していることが多く、術後の感染症には注意が必要である。
 骨折の予防には、転倒しにくい体力の維持、骨粗鬆症の予防、転倒防止に向けた環境整備が重要である。65歳以上の女性、70歳以上の男性には骨密度を測定することが推奨されている(2015年 骨粗鬆症の予防と治療のガイドライン)。しかしながら、高齢者の転倒は老年症候群であり、適切な介護によっても防ぎ切れない側面があると言われている。
 施設では、 ADLの自立、在宅復帰に向けて、本人の運動能力に応じて、座位・立位でバランス、筋力・柔軟性向上、自立歩行、および階段の昇降などを実施している。また、見守りを実施しながら、車倚子の方は立位、立位の方は歩行、歩行ができる方には階段の上り下りを勧めている。転倒を恐れる余り、運動を控えるとザルコペニア、介護状態となることが心配され、両者はトレードオフの関係にあると言える。さらに、栄養管理および薬物治療を適切に管理し、リハビリテーションが円滑に進むようにサポートしている。


 老健では、抑制を行わないため、転倒の頻度が高い。骨折のリスクを恐れるあまり、リハビリ・運動を制限すると、筋力の低下につながるが、過度に実施すると転倒のリスクが増大する。運動を実施することで生じるリスクとやらないことによって生じるリスクを勘案し、適正なリハビリが求められる。固い床をさけるなどの対策により骨折リスクの軽減を図ることはコントロール可能なものである(環境因子)。転倒したときに問題となるのは、抗凝固薬と抗血栓薬である。
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